植村和堂(1906-2002) 

 書家植村和堂は、初め相澤春洋にかなを、益田石華に漢字を学び、その後かなは平安時代の古筆を、漢字は漢・魏・晋・唐から元・明に至る法帖を手本として学んで大成した。また、田中親美に就いて古美術、古筆の薫陶を受け、古筆、古写経の収集家としても有名。大和絵も得意とし、また、筆墨硯紙についても造詣が深く、書家の枠を超えた、昭和を代表する文人として活躍した。生前に集めた数百点にのぼる古筆・古写経は、没後東京国立博物館、根津美術館、荒川区等に寄贈されている。 




 


略年譜

 明治39年 |  1歳 | 3月26日東京都日本橋で宗吉、ハルの次男として生まれる 
 大正10年 |  16歳 | 相澤春洋に師事。
 大正12年 |  18歳 | 大震災に遭遇し、大阪に避難。益田石華に師事。
 昭和元年 |  21歳 | 東京に戻り、相澤春洋に再入門。
 昭和3年 |  23歳 | 松濤館の富名腰義珍について空手を習い始める。
 泰東書道院に出師表を出品して特選、かな部で万葉長歌を出品し褒状首位
 昭和4年 |  24歳 | 文検合格。私立高輪商業に就職。
 昭和7年 |  27歳 | 岡橋あいと結婚。
 昭和8年 |  28歳 |  長男修誕生。
 昭和10年 |  30歳 | 浅草女子商業の書道講師兼任。次男斉誕生。
 昭和11年 |  31歳 | 書道教室「修静書院」の看板をかける。
 昭和12年 |  32歳 | 泰東書道院かな部に粘葉本「万葉防人歌」を出品し、かな部最高賞を受ける。
 昭和15年 |  35歳 |  三男正誕生。
 昭和19年 |  39歳 | 中央大学と日大工科の空手部師範を引き受ける。
昌平学園、浅草女子商業、滝野川女子商業などの書道講師を担任。
 昭和20年 |  40歳 | 7月徴兵令状。入隊後熊本師団に配備される。9月復員
 昭和22年 |  42歳 | 日本書道美術院結成。理事就任。
日本書道学校を設立。
 昭和23年 |  43歳 | 毎日新聞主催の全日本書道展かな部審査員となる。
母校開成学園の書道講師を担任。
清和書道会設立。
 昭和24年 |  44歳 | 毎日新聞社主催日本総合書芸展かな部審査員となる。
 昭和26年 |  46歳 | 毎日書道展かな部審第査員となる。
以後第21回展までかな部審査員を担当。
 昭和27年 |  47歳 | 機関誌「清和」を発行。
 昭和39年 |  59歳 | 法華経五巻を慈光寺に奉納。
 これが機会となって、写経会が結成される。
 昭和53年 |  73歳 | 東京国立博物館の評価委員を委嘱される。
 昭和54年 |  74歳 | 文部省芸術科書道資料作製協力者を委嘱され
 昭和58年 |  78歳 | 日本橋高島屋画廊にて喜寿記念書展を開
 昭和61年 |  81歳 | 日本橋高島屋画廊にて傘寿記念書展を開催。
根津美術館評議員に就任
 昭和62年 |  82歳 |  NHK通信教育で写経講座般若心経を担当
 平成2年 |  85歳 |  日本橋高島屋で「七午記念展」を開催
 平成5年 |  88歳 | 大崎駅前ウエストギャラリーにおいて
「植村和堂書画小品 展 」を開催
 平成6年 |  89歳 | 荒川区町屋文化センターにて和堂コレクション
「中国書画家名品展」開催。高島屋画廊にて米寿記念展開催
 平成7年 |  90歳 | 大崎のウエストギャラリーで「江戸時代文人展」開催。
 平成8年 |  91歳 | 日本橋高島屋で卒寿展開催。
荒川区のムーブまちやで「植村和堂書展」開催。
荒川区に所蔵する古筆を寄贈。
毎日新聞社から書道顕彰を受ける。
東京都から「文化功労賞」受賞。
 平成9年 |  92歳 |  中尊寺の金色堂に「紺紙金泥法華経全十巻」を奉納。
 平成12年 |  95歳 |  紺綬褒章を受章
 平成13年 |  96歳 |  愛知県春日井市の道風記念館で「和堂作品展」を開催。
 平成14年 |  97歳 |  7月 肺炎のため永眠 

主な著書

 古筆名蹟総覧 |  つみくさ会 |  1946
 書道技法講座 高野切三種 |  二玄社  |  1970
 書道技法講座 天平写経 |  二玄社  |  1970
 書道技法講座 朗詠集三種 |  二玄社  |  1970
 和堂書談 |  清和書道会  |  1973
 中国名筆鑑賞 |  秋山書店 |  1976
 日本名筆鑑賞かな編 |  秋山書店 |  1977
 筆墨硯紙 |  理工学社 |  1977
 清和書談 |  理工学社 |  1978
 日本名筆鑑賞漢字編 |  秋山書店 |  1979
 書道入門 | 家の光協会 |  1980
 和墨と和硯 |  理工学社 |  1980
 日本の写経 |  理工学社  |  1981
 写経(見方と習い方) |  二玄社 | 1982 
 写経の辞典 |  三省堂  |  1986
 写経のレッスン |  二玄社 |  1990
 和堂紀行 |  主婦の友社  |  1995
 続和堂紀行 |  主婦の友社  |  1996
 色紙百人一首 |  二玄社  |  1996
 かな墨場必携(和歌編) |  二玄社  |  1999
 かな墨場必携(俳句編) |  二玄社  |  1999
 美しい写経 |  二玄社  |  2002